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札幌高等裁判所 事件番号不詳 決定

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨ならびに理由は別紙記載のとおりである。

商法第二百三十七条第二項の規定による少数株主の総会招集許可申請を認許した裁判に対しては不服を申立てることができないものであることは非訟事件手続法第百三十二条第二項に明定するところであるから、仮りに所論のような事由があつても、これを客体として抗告することは許されないものである。それゆえ、本件抗告は不適法であること明かであるから却下を免れない。

なお、抗告人等は、右認許の裁判に対する不服申立を禁止した非訟事件手続法第百三十二条第二項の規定は、少数株主権の行使による総会招集許可申請人のみを拘束するに過ぎない旨を主張するけれども、右条項の適用範囲をこのように限定する根拠がなく、又同条項は憲法第三十二条に違反することもないと解すべきであるから右説示に反する抗告人の主張はもとより採用するに値しない。

よつて、本件抗告は不適法であるからこれを却下するべく、非訟事件手続法第二十五条、民事訴訟法第四百十四条、第三百八十三条、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり決定する。(昭和三一年四月二日札幌高等裁判所第二部)

抗告の趣旨

一、原決定を取消す。

二、相手方の申請を棄却する。

右趣旨の御裁判を求める。

抗告の理由

一、抗告人株式会社北海タイムス社は資本額弐千弐百五拾万円、額面株式壱株の金額五拾円、発行済株式の総数四拾五万株の株式会社であり抗告人等はいずれも同会社の株主であつて且つ抗告人藪務、同紫垣正次、同戸倉忠次、同和島登は同会社の取締役、同福山甚三郞、同秋吉兼茂は同会社の監査役である。

二、相手方等は前記会社の総株数百分の三(一万三千五百株)以上に相当する株主である処昭和三十一年三月三日付内容証明郵便を以つて取締役藪務外三名、監査役福山甚三郞外一名(以上何れも抗告人)の解任の件を会議の目的たる事項として株主総会招集方請求をなし同請求書は翌四日右会社に到達した後同月十二日札幌地方裁判所に対し同会社は遅滞なく右総会招集の手続をしないとの理由で商法第二三七条第二項非訟事件手続法第百二十六条、同法第百三十一条により同会社株主総会招集許可申請をしたので同裁判所は即日右申請が相当なりとして前記申請人(相手方)に対して総会招集許可の決定をしたので相手方等は同月十四日付を以て同年三月二十九日午前十時札幌市北二条西四丁目グランドホテルで前記目的事項につき株主総会を開催する旨の通知を発したのである。

三、一方抗告人会社は前記相手方等よりの総会招集の請求を受けるや会議を要する事項につき前記取締役等(抗告人)に於て慎重熟議の結果同月十二日右相手方等の請求に基いて総会を招集することに決定し同月十六日各株主に対して同会社株主総会を来る四月十二日取締役菊地吉次郞、同藪務、同紫垣正次、同戸倉忠次、同和島登、監査役福山甚三郞、同秋吉兼茂の解任並に後任監査役選任の件を会議の目的として札幌市北二条西四丁目グランドホテルで開催する旨の招集通知を為したのである。

四、しかし相手方等の申請を相当と認めて右の総会招集を許可した原決定は左の点に於て違法がある。

(イ) 商法第二百三十七条第二項に所謂遅滞なくとは即時又は何日間にというような速急的な意味でない。少数株主から右の通知を受けた会社が取締役会で審議を重ねた結果右通知を受けた時から十日内外で其手続に着手すれば事足りるのである。本件につき抗告人等が右通知を受けた翌日頃から数回取締役会を開いて慎重に審議した結果同月十二日招集することに決定し直ちに招集通知書を整備して同十六日に発したのであるから抗告会社に遅滞の責任はない。従つて之れを前提として為された原決定はいけない。

(ロ) 仮りに抗告人会社に相手方等の右総会招集の請求に対して遅滞の事実があつたとしても前記裁判所の許可を得て総会を招集した総会の期日前に抗告人会社が招集の手続をしたのであるから相手方等の申請を相当と認めた原決定はその根拠を失い相手方等の総会招集権は喪失したのである。之れに基いて為された原決定は違法である。

何となれば株式会社の株主総会の招集は常に当該会社が招集することが本筋であつて若し会社がどうしても招集しない場合に少数株主が招集することを許しているのであるから会社自らが商法第二三七条第二項後段所定の招集請求を受けた日から六週間以内に総会を招集すれば必然的に少数珠主の招集は失効することは同法の解釈上当然である。

(ハ) 或は本件のように相手方等の発した裁判所の許可に基く総会招集通知と右会社の発した同上招集通知が重復した場合に若し会議を目的とする事項が全然同一の場合は曩に発した相手方等の招集通知を敢えて無効にする必要がないから原決定を取消す筋合のものでないとの考え方もあろうが本件は前述のようにその目的事項は同一でないのである。

勿論相手方らの要求する会議目的事項を包含していることは云うまでもないが抗告人会社の本件招集手続に於て会議を求むる事項中に取締役菊地吉次郞の解任の件をも含めているのである。

同人は別紙告発状記載の横領事件で目下司直の手により捜査中の者であつてこの横領事件に端を発して同人擁護の為めに本件少数株主による招集手続が行われたのである。卒直に言えば前記菊地取締役を排斥すべきか否かが右総会の主要会議事項である。

右のように重復した二個の会議事項が招集の目的となつた場合に当該株式会社の内紛一切を清算する必要から見てもより大きな目的事項を有する招集通知を以て有効としなければならないことは法理上当然の解釈と云わねばならぬ。

(ニ) 原決定に理由を附していないから違法の決定である。

前記のように原決定は非訟事件手続法第一三一条の規定によつて為されたものであるから該決定に理由を附せなければならぬことは同法第一三二条第一項の明定する所である。

しかるに原決定にその理由を附していないので斯る決定は違法のものであるから当然取消さるべきものである。

五、前記のように原決定は非訟事件手続法第一三一条第一項によつて為されたもので同条第二項の規定によつて不服を申立つることができないとの疑念もあるが同項の不服申立禁止規定は少数株主権の行使による総会招集許可申請人にのみ制限した規定であつて本件のように当該申請の相手方でないが重大な利害関係に在る抗告人等に対しては適用がないから抗告申立ができることは憲法第三二条非訟事件手続法第二〇条によつて明白である。仮りに右抗告人会社が右申請事件の相手方であるとしても、同条禁止規定は憲法第三二条違反の規定であるからその効力がない。

よつて抗告人等は、孰れの方面から見ても本件決定のような右申請人等(相手方)の申請に基く一方的の裁判に服従すべき義務がないので原決定に対して当然抗告申立ができるのである。

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